しろくまのきもち

しろいくまの日常やらなんやら、氷に乗ってる

去っていった彼の幸せを祈れるか

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こんなふうに私を見つけた途端に嬉しそうに駆け寄ってくる彼氏はどこにいるのでしょうか。


さてさて、流れるプールに身を任せて行われた女子会の結果、何かしらの未練と呼ばれるものが必ずしも残る訳で、しかしながらそれは思いの強さと比例しちゃうんですねえ。


私にしろ友達にしろ去っていったにも関わらず密やかに復讐を企んでいるような、しかし今のこの状況にも穏やかに流れるしんみりとした何だか新鮮で寂しげな雰囲気に包まれているのです。
もう彼はそばにいないのに。


「何を幸せそうな雰囲気見せつけてるんだ!」と友達が別の友達に宥められている頃、私はこんな情景を思い出していました。


それは去る二年前のある土曜日、休みにも関わらず授業に出た帰りのことでした。


周りはカップルや家族連れ、普段一緒にいない人との休みの時間を惜しみなく楽しんでいる人々の間を縫うように歩く私、彼は予定があるらしく何も鳴らない携帯電話には用はなく、しかしおしゃれな服は無いだろうかと辺りを見回しながらイヤホンの音量を上げ、一人ミナミの地下街を歩いていました。


すると!パンプスいらずな身長が功を奏したのか運命の巡り合わせなのか、人混みから頭一つ飛び抜けたこれまた高身長な彼を発見、しかしそっくりさんという可能性もあると考え、確かめてから声を掛けようと息を潜め少し後ろから彼を眺めておりました。


人混みの切れ切れになる階段を待ち侘び、用事はどうしたのかな、これからどうするのかなと彼に掛ける言葉を色々用意していた私の気持ちはあと5秒で裏切られるというのに!


各人が思い思いの方向へ向かう分かれ道へ続く階段にてそこで私が見つけたのは、彼の隣を必死にロングスカートの裾を気にしながら歩く小さな女性なのでした。
流行りのパッチワーク柄のスカートにベージュのポンチョのような羽織り、ふわふわの巻き髪、そして私とは正反対の小柄なその身長、私は森ガールに殺されたと確信。


ロッカーの方へ向かう2人、いつの間にか涙目な私は二人を追うことも出来ず気持ちを堪えるのに必死になりながら南海難波の階段を駆け上がって行きました。


後から直接聞くと、友達の就職祝いプレゼントを探しに来たと言うことでした、三人という数字は私を安心させるものなのか単に冷たい嘘だったのか、今になっても分からないまま。


あの時一番悲しかったのは彼の隣に私じゃない女の子が歩いているということよりも、私と遊ぶ時と全然違う服装をしていたことでした。
まるで藤原基央さんのような服装が似合うと思っていた彼は、少しビビッドな深めの青のシャツを纏っていたことを私は忘れません、本当はそんな服が好きなんじゃないかと、それなのに私の前では一度も着てきたことがないのは私への優しさなのかと。


今になってはもう何も関係ない話ですが、私とは違う道を歩み始めた彼の幸せをまだ思えそうもないです、自分で精一杯なので。でもだんだん踏ん切りが付いてきてるのも確かで、もう少しすれば彼の背中に手を振れるような気がします。
きっと休みの繁華街に繰り出すときは、白シャツではなくもう少し派手な服装をしていることでしょうね、貴方はお洒落だったから。
でももっとお洒落を拗らせて赤いネクタイでも付けて、銀シャリを目指してみてはどうだろうかと心で思うのは、私の密やかな彼への最後の復讐なのかもしれません。